吸入麻酔薬が幼若期の中枢神経において,アポトーシス誘導や神経回路の発達障害に関連した機能異常をもたらすことが動物実験において証明されている.その機序としてNMDA受容体の遮断とGABA受容体の賦活化,海馬シナプスLTP形成の阻害や,幼若脳におけるGABAの興奮性作用による神経毒性などが挙げられる.一方,ヒト小児における吸入麻酔薬の神経毒性については,現在大規模な前向き研究が進行中であり,すでに一部の研究結果において,単回,短時間使用の安全性が証明されている.しかし,新生児,乳児期の全身麻酔に関しては慎重な判断が必要であり,神経毒性の可能性のある薬剤の使用や,長時間の曝露を避けることが望ましい.