2023 年 43 巻 7 号 p. 562-565
安全の考え方は,技術の時代から人的要因(ヒューマンファクター)の時代を経て安全マネジメントの時代へと変遷してきた.複雑適応系で説明される医療システムの安全マネジメントとして,レジリエンス・エンジニアリングの応用であるSafety-IIが注目されている.医療は,限られたリソースで動的に変動する状況に対して柔軟で適応的に対応し,圧倒的に多くの業務で目的としたアウトカムを達成している.そうした日常の成功から学び先行的に安全を創るため,Safety-IIの実装にむけた研究が進められている.Safety-IIはSafety-Iに代わるものではない.これからの安全管理はSafety-IとSafety-IIを相互に補完的なものと捉え,バランスよく活用した管理が求められている.