2023 年 43 巻 7 号 p. 566-572
通説として医学界に受け入れられてきた揺さぶられっ子症候群(Shaken Baby Syndrome :SBS),虐待性頭部外傷(Abusive Head Trauma :AHT)をめぐる仮説(SBS/AHT仮説)に基づく医師の意見を根拠に,日本でも養育者による虐待が疑われ,親子分離や刑事訴追が行われてきた.しかし,近時,それらの訴追において無罪判決が相次いでいる.その背景には,SBS/AHT仮説の医学的根拠が揺らいでいる上,検察側医師の誤った診断があると考えられる.医学界として,誤った親子分離や冤罪の深刻さを踏まえて,SBS/AHT仮説にするゼロベースでの検証が求められている.