右室にのみ機能的狭窄を持つ肥大型心筋症は極めて稀で病態解明も不十分である.患者は無症候であったが整形外科手術前の心雑音精査により,右室側への中隔肥厚が著明で右室内のみ圧較差がみられる本症と診断された.虚血性心疾患に準じ前投薬にジアゼパムやペチヂン等を用い,十分に鎮静しGOF麻酔にて管理した.心収縮増強時に左室流出路の閉塞を示唆する動脈圧波形変化を示すと共に,ハロセンによる心収縮抑制時には収縮期雑音の消失を見る等,興味ある循環動態を示した.術後のイソプロテレノール誘発試験にても左室内圧較差は認め得なかったが,麻酔中は前・後負荷を維持しつつ心収縮力を抑制する左室型の肥大型心筋症同様の管理が有効と考えられた.