クリオグロブリン血症を合併した胸部大動脈瘤の患者に対する,人工心肺下,人工血管置換術の中等度低体温麻酔を経験した.クリオグロブリンは,低温下で白濁沈殿あるいはゲル化し加温により再溶解する特徴を持つ,病的血清蛋白である.本症例では,術中低体温によりクリオグロブリンの析出から,末梢循環障害が惹起される可能性があるため,術前よりステロイド療法,血漿交換を施行し,無事麻酔管理を行い得た.本症例の麻酔管理に際しては,術前よりクリオグロブリンの陰性化と,合併する血管炎に起因した臓器障害に留意し,十分な検索と術中のモニタリングが重要と思われた.