1993 年 13 巻 3 号 p. 264-269
収縮期血圧を指標とし,気管内挿管時の血圧上昇に対する二硝酸イソソルビド(ISDN)前投与の有効性を検討した.ISDN(20,30,40μg/kg)静注後,チオペンタールで麻酔を導入し,サクシニルコリンで筋弛緩を得たのち,気管内挿管した.ISDN静注から喉頭展開までの時間は,約1分30秒であった.血圧は,麻酔前日,麻酔導入前,気管内挿管直前,および挿管直後から20分後まで5分ごとに測定した.各測定時点において,ISDN20群,30群,40群の収縮期血圧を,ISDNを投与しない対照群のそれと比較すると,ISDN40群では挿管直前に,またISDN30群,40群では挿管直後に,対照群と比較して収縮期血圧は有意な低値を示した.以上の結果から,対照群で認めた挿管直後の血圧上昇に対してISDN20μg/kgの前投与は無効であり,ISDN40μg/kgは挿管直後の血圧上昇を抑制するものの挿管直前の血圧を有意に低下させ,一方,ISDN30μg/kgは挿管直前の血圧を低下させることなく挿管直後の血圧上昇を有意に抑制することが示唆される.したがって,われわれの方法でISDNを前投与するとすれば,30μg/kgが適当と考えられた.