1994 年 14 巻 10 号 p. 771-776
ジブカインを用いた脊椎麻酔の前投薬にクロニジン0.3mgを経口投与し,知覚遮断および運動遮断時間を計測した.クロニジン投与により知覚遮断時間は有意に延長したが,運動遮断時間には有意差を認めなかった.脳脊髄液中のNE, MHPG, DA, DOPACはクロニジン投与で低下した.これらの成績より,CSF中のNEがクロニジン投与群で非投与群に対して低下したのは,クロニジンの下降性ノルアドレナリン作動性延髄脊髄路抑制作用を反映したものと考えられる1).クロニジンは下降性ノルアドレナリン作動性延髄脊髄路を介してではなく,直接脊髄後角のα2レセプターに作用して知覚遮断時間を延長させたものと考えられる.
一方,5-HTおよび5-HIAAには変化を認めなかったことから,クロニジンはセロトニン作動性神経系に対しては影響を及ぼさないと考えられる.