1995 年 15 巻 4 号 p. 336-340
血清カテコラミンの異常高値を示す両側副腎褐色細胞腫と甲状腺髄様癌を術前に診断された多内分泌腺腫瘍症第2A型の周術期管理を経験した。甲状腺髄様癌摘出術に先立ち両側副腎褐色細胞腫摘出術を施行し,ホルモンの補充療法のもとに甲状腺全摘術を行ない良好な経過を得た。術後の家族内調査の結果にて,患者の長男に本症が発見され,追跡検索後に副腎褐色細胞腫摘出術および甲状腺髄様癌による甲状腺全摘出術が施行された。多内分泌腺腫瘍症第2A型の診断は腫瘍マーカーにより容易に行なえるようになったが,治療は甲状腺手術に先立ち副腎褐色細胞腫摘出術を施行し,さらに家族スクリーニングにて家族内発生の有無を検索することが重要と考える。