1999 年 19 巻 1 号 p. 42-46
悪性高熱症(MH)が疑われ筋生検を施行された患者2名および健常者4名について,前腕屈筋に対して運動負荷を行ないながら,そのリン核磁気共鳴(NMR)スペクトルを観測した.その結果,安静時には6名ともほぼ同様なスペクトルがみられたが,カフェイン-ハロタン拘縮テスト(CHCT)において陽性となった患者では筋エネルギー代謝が亢進しており,運動負荷によりクレアチンリン酸(PCr)の著しい減少と無機リン(Pi)の増加を認めた.また筋収縮テストにおいて陰性となった患者では運動負荷によってPCrは減少し,Piは増加したが,その変化はわずかであった.以上の結果は筋収縮テストによる診断結果の信頼性を高めるもので,骨格筋のNMRスペクトル観測はMHの非侵襲的な診断法として今後期待されるべき方法であることが示唆された.