日本臨床麻酔学会誌
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脳波による高齢者での吸入麻酔深度調節
奥田 平治益子 進也内田 盛夫片山 尅行野川 徳二
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1989 年 9 巻 1 号 p. 57-63

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抄録

吸入麻酔で大腿骨手術を受ける60歳以上の高齢患者において, 至適な麻酔深度に調節するために, 脳波及び視覚誘発電位の記録を行った.
手術室入室時, 覚醒状態ではα, β波を主とした脳波が見られたが, エンフルレン及び笑気の混合ガス吸入により一旦速波化し, その後麻酔が深くなるに従って高電位徐波成分の増加が観察された. vital signs により決められた適当と思われる麻酔深度時では, 脳波上θ波成分が30~50%含まれるものが多かった. また, 視覚誘発電位においては, 光刺激後170msec以後に見られる最大陽性波までの潜時 (Pmax) が, 入室時及び適当な麻酔深度時にそれぞれ207.1msec, 287.9msecとなっていた.
これらより, 術中の神経系モニタリング指標として, 脳波での高電位徐波成分の出現比率や視覚誘発電位の Pmax が参考になると考えられた.

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