日本臨床細胞学会雑誌
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原著
尿路上皮癌Grade1の細胞像の検討
―WHO分類による再評価―
小椋 聖子桜井 孝規清水 恵子江木 さつき則松 良明桜井 幹己
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2007 年 46 巻 6 号 p. 315-322

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抄録

目的 : 尿細胞診の成績向上のため, 尿路上皮癌Grade1の細胞像の理解を深める.
方法 : 1994年6月~2004年3月の間に術前自然尿細胞診と経尿道的膀胱腫瘍切除術が施行され, 組織学的に尿路上皮癌Grade1, あるいはGrade1優位と診断された154例を対象とした. これらに対しWHO分類による評価を行い, 最も強い異型部分により低悪性度乳頭状尿路上皮性腫瘍 (Papillary urothelial neoplasm of low malignant potential : 以下PUNLMPとする), 低異型度尿路上皮癌 (Papillary urothelial carcinoma, low grade : 以下Low UCとする), 高異型度尿路上皮癌 (Papillary urothelial carcinoma, high grade : 以下High UCとする) に再分類し, 各病変の術前細胞診成績の検討とPUNLMP症例の細胞像の検討を行った.
成績 : 対象となった154例のうち151例が再評価により, PUNLMP28例, Low UC108例, High UC15例に分類された. PUNLMP症例の術前自然尿細胞診の陽性率および疑陽性を含む陽性率は, Low UC, High UC症例に比べ, 有意に低かった. PUNLMP疑陽性症例ではLow UC症例に比べ, 異型の少ない尿路上皮細胞が散在性に出現していた.
結論 : PUNLMPは自然尿細胞診による陽性, 疑陽性率がGrade1の尿路上皮癌のなかでも特に低く, 尿細胞診成績を低下させていた. また, PUNLMPの細胞診断には散在性に出現する小型異型尿路上皮細胞に着目することが重要である.

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© 2007 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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