2008 年 47 巻 5 号 p. 377-380
背景 : Desmoplastic small cell tumor (DSCT) は若年者に好発し, 非常にまれで予後不良な腫瘍である. 今回, 術中腹水細胞診で DSCT を推定しえた 1 例を経験したので報告する.
症例 : 39 歳男性で, 上腹部腫瘤を主訴に来院. 術中迅速腹水細胞診標本では N/C 比の高い 15∼20μm の小型円形細胞が結合性の疎な集塊で多数認められた. 組織学的には小円形細胞腫瘍が胞巣状に間質の繊維化を伴って増生し, 免疫染色では Cytokeratin, Vimentin, Epithelial Membrane Antigen (EMA), Desmin と WT-1 が陽性であった.
結論 : DSCT における細胞所見の報告の多くは穿刺吸引細胞所見の記載であり腹水細胞所見の記載は乏しい. DSCT の腹水細胞標本では個々の腫瘍細胞の形態からは反応性中皮, 組織球などの良性細胞や, 種々の小円形細胞肉腫との鑑別が難しいと思われるが, 腫瘍細胞の出現パターン, 発生部位, 年齢などの臨床情報が病変推定のポイントと思われる.