日本臨床細胞学会雑誌
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症例
粘液産生を伴った胆管内乳頭状腺癌の 1 例
河原 真弓子貞嶋 栄司木下 準子山崎 加奈子岸田 奈津高尾 貴史中嶋 哲也入江 康司
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2009 年 48 巻 6 号 p. 371-375

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抄録

背景 : 胆管内乳頭腫瘍 (intraductal papillary neoplasm of the bile duct : IPN-B) は, 組織学的に膵管内乳頭状粘液産生腫瘍に類似した腫瘍であるが, その細胞像に関する報告はほとんどない. われわれは肝内胆管内に多量の粘液産生を伴った胆管内乳頭状腺癌の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 60 歳代, 女性. 糖尿病の精査にて肝機能異常を指摘され, 腹部エコーにて肝門部に嚢胞状腫瘤が認められた. 術中細胞診では, 粘液を背景に核偏在した高円柱状の細胞からなる大型乳頭状集塊を認め, 腫瘍細胞は結合性の低下, 細顆粒状クロマチンおよび明瞭な核小体を有していた. 組織学的には, 高円柱状細胞の乳頭状増殖で, 腫瘍細胞の胞体は好酸性を呈しており, 卵巣様間質所見はみられなかった. 免疫組織化学おいて, 腫瘍細胞は MUC1 および MUC5AC の発現を認めた. 腫瘍細胞の明らかな間質浸潤はみられなかったが, 細胞異型により粘液産生胆管内乳頭状腺癌と診断した.
結論 : IPN-B の細胞所見は症例の蓄積が必要であるが, 結合性の低下や核小体所見は良悪の鑑別に重要と思われた.

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© 2009 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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