日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
特集 <検体採取・塗抹法の精度管理 (検体採取・塗抹法の工夫と効果)>
リンパ節穿刺細胞診における精度管理, 特に検体不適正率の改善に向けて
蒲 貞行所 嘉朗鈴木 緑小林 雅子尾関 順子土田 秀小島 勝越川 卓谷田部 恭
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 49 巻 6 号 p. 437-442

詳細
抄録

目的 : リンパ節穿刺細胞診における精度管理, 特に検体不適正率の改善について考察した.
対象と方法 : 対象は主に 2002∼2007 年 (6 年間) に愛知県がんセンター中央病院で施行された 1691 件と 2005∼2007 年での群馬県立がんセンターでの 159 件である. 愛知県がんセンター中央病院での検体採取法は, (1)穿刺セット (Diff-Quik : D-Q 染色, 顕微鏡など) 搭載カートを用意し細胞診専門医および細胞検査士 (ときに臨床検査技師) が臨床現場に出向いた. (2)超音波下に 24 G 針のみで穿刺し, 回転・非吸引式穿刺法で行った. 穿刺後, 針をシリンジに装着し検体を吹き出した. (3)スライドガラスとカバーガラスでなす内角部分の検体を薄く進展させて塗抹した. (4)採取現場で D-Q 染色を行い, 採取状態を確認した. (5)通常 D-Q 染色とパパニコロウ染色を併用した. 一方, 群馬県立がんセンターでは, 超音波ガイド下で, 22 G 針を付けた注射器 (20 ml) を装着したピストル式器具で吸引細胞診が行われている. ガラスに吹き出された採取検体はすり合わせ法で塗抹, 95%エタノール固定され, 検査室にていずれもパパニコロウ染色がされるが, これら穿刺∼塗抹∼固定まですべて臨床医によりなされている.
成績 : 愛知県がんセンター中央病院では, 2002∼2004 年の平均検体不適正率は 9.6%であったが, 2005∼2007 年では年平均 3.8%, 各年 5%以内であった. 群馬県立がんセンターでの検体不適正率は年平均 3.1%であった.
結論 : 両施設とも, リンパ節穿刺細胞診の年平均検体不適正率が 5%以内に維持されている. 検体適正率の向上のためには, 超音波ガイド下で確実に病変に針を的中させることが肝要であり, そのためには採取者の十分なトレーニングが必要とされる. 施設の事情にもよるが, 採取者と検体処理を担当する細胞検査士とのチームワークによる体制づくりが, 穿刺現場での作業の効率性の面から, また安定した検体適正率の維持を図るうえからも望ましいと考えられた.

著者関連情報
© 2010 公益社団法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top