日本臨床細胞学会雑誌
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症例
腹膜インプラントを伴う卵巣漿液性境界悪性腫瘍の 1 例
大森 真紀子端 晶彦須波 玲中澤 久美子石井 喜雄弓納持 勉近藤 哲夫加藤 良平
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2011 年 50 巻 1 号 p. 24-29

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抄録

背景 : 卵巣の悪性腫瘍では, 腹水細胞診は病期や治療法を決定するうえでたいへん重要である. 今回われわれは腹膜インプラントを伴った漿液性境界悪性腫瘍の症例を経験したので報告する.
症例 : 16 歳, 女性. 主訴は下腹部膨満感で, 両側卵巣に充実性部分を伴う嚢胞性腫瘍が認められた. 術中の腹水は淡黄色で, 細胞所見は比較的きれいな背景に集合性あるいは散在性に異型細胞が多数認められた. 前者は不規則重積を示し細胞質内に大小さまざまな空胞がみられ悪性と判断されたが, 後者は反応性中皮細胞との鑑別が問題となった. しかし, 両者の細胞像には移行を示す所見や, 核に類似性が認められた. また, 散在性の細胞はギムザ染色で細胞質が淡明であり, さらにカルレチニンが陰性であったことから, どちらも腫瘍細胞であり, 漿液性腺癌を考えた. 組織学的には, 中等度の異型を示す腫瘍細胞が乳頭状に増殖し, 間質浸潤が認められなかったことから, 漿液性境界悪性腫瘍と診断された. 腹膜には線維形成性インプラントが認められた.
結論 : 卵巣腫瘍の腹水細胞診では腫瘍細胞と反応性中皮との鑑別が問題となることがあるが, さまざまな手法を用いて腫瘍細胞を見逃さないことが重要である.

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© 2011 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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