日本臨床細胞学会雑誌
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症例
G-CSF 産生肺多形癌の 1 剖検例
松岡 拓也松本 直子中川 美弥田上 圭二神尾 多喜浩
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2011 年 50 巻 2 号 p. 109-114

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抄録

背景 : 肺多形癌はまれな腫瘍であり, 多彩な細胞像を呈する. 今回, 肺多形癌を経験したので報告する.
症例 : 56 歳, 男性. 歩行困難, 食事摂取困難で搬送され, 画像上, 左肺上葉に 10 cm 大の腫瘤が指摘された. 気管支擦過細胞診では, 多数の好中球を背景に, クロマチンの増量と明瞭な核小体を有する大型の腫瘍細胞が散在性または一部集塊状に出現していた. 2 核細胞, 多核細胞や紡錘形細胞と多彩な細胞が出現し, 核分裂像も散見された. 一部の腫瘍細胞は細胞質が淡く, 核の偏在傾向がみられ, 低分化型腺癌を推定した. 剖検時, 肺腫瘍の割面は灰白色充実性で, 内部に出血・壊死を認めた. 組織学的には, 明瞭な核小体と核の大小不同を有する紡錘形あるいは多角形の腫瘍細胞が錯綜しながら増殖していた. 多核細胞や巨核細胞が目立ち, 多形性に富み, 異常核分裂像も認めた. 部分的に, 腫瘍細胞は充実性に増殖し, 細胞間橋や異常角化像が散見された. 免疫組織化学的に腫瘍細胞は EMA, ケラチン, ビメンチン, granulocyte-colony stimulating factor (G-CSF) に陽性であり, G-CSF 産生多形癌と診断された.
結論 : 細胞診で紡錘形細胞や多核細胞, 巨細胞など多彩な細胞像がみられた場合, 多形癌の可能性も考慮すべきである.

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© 2011 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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