日本臨床細胞学会雑誌
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症例
術後早期に脳転移をきたした子宮頸癌の 1 例
長山 利奈藤田 拓司太崎 友紀子北出 尚子山口 真一郎藤井 毅中村 淑美山本 一郎
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2011 年 50 巻 6 号 p. 351-354

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抄録

背景 : 病理組織診断は主たる病巣により診断され, 特記すべき事項があればコメントとして併記されるが, 従たる病巣に関しては診断に反映されないことがある. 今回, 術後早期に脳転移をきたした子宮頸癌の 1 例を経験し, 初診時の子宮頸部細胞像に特徴的な所見を認めたので報告する.
症例 : 36 歳, 女性, 不正性器出血を主訴に当院を紹介受診した. 子宮頸部 5 時方向に 2 cm 大の易出血性腫瘍を認め, 子宮頸部細胞診では扁平上皮傍基底型悪性細胞のほか N/C 比の高いクロマチンの豊富な小型の悪性細胞が小集塊状に出現していた. 組織診でも同様の形態をした悪性細胞の間質内浸潤を確認し小細胞癌疑いと診断した. 子宮頸癌 Ib1 期の診断で広汎子宮全摘出術を施行した. 最終病理組織診断は非角化型扁平上皮癌でリンパ節転移陽性であり化学療法を追加した. 初回治療から 5 ヵ月後, 見当識障害, 悪心, 嘔吐, ふらつきを主訴に受診, 左前頭葉に径 5.5 cm 大の腫瘍を認め, 腫瘍摘出術を施行した. 摘出腫瘍の組織像は原発巣に類似し, 子宮頸癌脳転移と診断した. 術後 PET-CT 検査で異常集積がないため, 放射線全脳照射 (50 Gy) を施行した.
結論 : 子宮頸癌の細胞像中に, 小型細胞から構成されるインディアンファイル状配列を示す細胞集団を認めた場合は, 血行性転移にも留意し, 脳転移も念頭におく必要がある.

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© 2011 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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