2011 年 50 巻 6 号 p. 355-359
背景 : 子宮体部漿液性腺癌は比較的まれな腫瘍であり, 予後は不良である. 今回, 筋腫分娩をきたした粘膜下筋腫の表層萎縮内膜から発生したと考えられる, 漿液性腺癌の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 70 歳, 2 回経妊 1 回経産, 52 歳閉経. 主訴は不正性器出血. 腟鏡診にて筋腫分娩様の易出血性腫瘤を認めた. 腫瘤の擦過細胞診は ClassV, 腺癌であり, 生検で低分化腺癌と診断された. MRI では子宮口より腟内に連続する径 4 cm 大の腫瘤を認めたが, 発生部位の判別はできなかった. 子宮体癌II期や子宮頸癌も疑われたため広汎子宮全摘術+両側付属器摘出術+骨盤リンパ節郭清術を施行した. 摘出物肉眼所見では, 子宮底部から茎をもって懸垂する結節状腫瘤を認めた. 組織学的に腫瘤は有茎性粘膜下筋腫であり, これを覆う子宮内膜および筋腫内に漿液性腺癌を認めた. 両側付属器や骨盤リンパ節に転移は認めなかった. 免疫染色では ER (estrogen recepter), PR (progesterone recepter), p53 ともに一部陽性であり, 混合型の子宮体部漿液性腺癌と診断された.
結論 : 筋腫分娩をきたした有茎性粘膜下筋腫のみに認められた, 比較的まれな漿液性腺癌を経験した. 閉経後認められる筋腫分娩においても悪性変化を念頭におき, 精査する必要性があると思われた.