日本臨床細胞学会雑誌
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症例
穿刺吸引細胞診が診断に有用であった肛門腺管由来肛門管原発粘液癌の 1 例
河野 真由美渡辺 昌三河岡 久美子山下 葵大野 絵美有廣 光司中山 宏文谷山 清己
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2012 年 51 巻 3 号 p. 178-182

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抄録

背景 : 肛門管癌は, まれな悪性腫瘍であり, 発生頻度は大腸癌の 2∼3%程度とされている. 今回われわれは, 肛門腺管由来肛門管原発粘液癌の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 69 歳, 男性. 肛門部に硬結腫脹と軽い痛みがあり, 検査のために近医受診. 右∼後肛門輪に直径 15×30 mm の嚢胞性腫瘍が認められた. 悪性疑いで肛門周囲膿瘍部分が小切開され, 同部位の穿刺吸引細胞診が行われた. 細胞診で粘液性腺癌と診断されたが, 組織学的には 3 回目の硬結部生検にて, 腺癌が確認された. その後, 他院にて腹会陰式直腸切断術と所属リンパ節郭清術が施行された.
結論 : 粘液産生著明で深部に存在する腺癌の場合, 生検のみでは十分な材料が常に得られるとは限らず, 粘液内に浮遊する細胞を比較的容易に採取できる穿刺吸引細胞診が有用であると思われた.

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© 2012 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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