背景 : 自己免疫性膵炎 (AIP) は腫瘤形成性炎症性疾患で, しばしば膵癌との術前診断で切除術が施行される. 今回われわれは胆汁細胞診で疑陽性と判定し, 画像診断を踏まえて手術にいたった AIP の 1 例を報告する.
症例 : 67 歳男性. 味覚異常, 褐色尿を主訴に来院. 血液生化学的検査で総ビリルビン異常高値, CT 検査で肝内胆管拡張を認め, さらに, ERCP, 胆汁細胞診が施行され, 腫瘍による閉塞性黄疸と診断された. 細胞診では背景に胆汁色素を認め, 配列の不整な細胞小集塊がみられた. 集塊構成細胞の核形は不整で, 微細∼細顆粒状クロマチンの軽度増量を認め, 疑陽性と判定した. 摘出した膵臓の割面は境界明瞭な病変で, 病変部は組織学的に膵管・小葉間の線維化がみられ, リンパ球や IgG4 陽性形質球の浸潤を豊富に認めた. 膵内胆管の上皮には炎症性変化とみられる細胞異型を認めた.
結論 : AIP はステロイド治療が奏功する炎症性疾患であり, 手術を回避するためにも正確な診断が求められる. 今後, 臨床背景, 血清学的所見から慎重に判断し, 胆汁細胞診において異型細胞を認めた場合においても臨床的に AIP が疑われる症例に対しては, EUS-FNA による確認が必要であると考えられた.