日本臨床細胞学会雑誌
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症例
膀胱巣状亜型尿路上皮癌の 1 例
籠谷 亜希子石田 光明吉田 桂子岩井 宗男宮平 良満奥村 寿崇岩本 望岡部 英俊
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2012 年 51 巻 4 号 p. 295-298

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抄録

背景 : 巣状亜型尿路上皮癌 (NV-UC) は, 尿路上皮癌の非常にまれな亜型で, 核異型に乏しい腫瘍細胞が, ブルン細胞巣に類似した小型胞巣を形成する. NV-UC の細胞像に関する報告は少ない. 今回, 膀胱 NV-UC の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 70 歳, 男性. 画像検査で膀胱壁の不整な肥厚を指摘され, 紹介受診した. カテーテル洗浄尿検体では, 尿路上皮細胞の小型集塊が散見された. 集塊を構成する尿路上皮細胞の核のサイズは 14∼17μm で, N/C 比が軽度上昇し, 核クロマチンは軽度顆粒状に増量し, 核小体がみられる尿路上皮細胞が少数存在した. 全体的に核異型は軽度であったが, 集塊内での核間距離は不規則で, 軽度の重積がみられたことから, 尿路上皮癌の可能性が疑われ, 疑陽性と判定した.
膀胱生検で, NV-UC と診断され, 膀胱全摘術が施行された. 腫瘍は, 膀胱外膜の脂肪組織や前立腺に浸潤していた.
結論 : NV-UC は細胞学的に異型性に乏しく, 予後の良い低異型度乳頭状尿路上皮癌 (LG-UC) との鑑別は重要である. LG-UC では異型性に乏しい腫瘍細胞が乳頭状の集塊を形成するのに対して, NV-UC では軽度核膜不整な細胞が小型集塊を形成する点が鑑別点になるかと思われるが, その鑑別は困難である.

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© 2012 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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