2012 年 51 巻 6 号 p. 425-430
背景 : 変性子宮筋腫の診断で腫瘍核出術が施行され, 術後急速に全身転移へと進展した未分化神経外胚葉性腫瘍 (primitive neuroectodermal tumor, 以下 PNET) の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 25 歳女性, 主訴は下腹部痛. 画像上子宮体部前壁に変性筋腫様の腫瘍が認められ, 腫瘍核出術が施行された. 腫瘍は子宮筋層内に存在し, 最大径は約 7 cm であった. 組織学的には不整地図状の壊死を伴う小円形細胞腫瘍の像を呈し, ロゼット様構造や流れ様の配列がみられた. 腫瘍捺印細胞診では, 壊死性背景に N/C 比の高い小型円形細胞が孤立散在性あるいは結合の緩い小集塊で認められた. 免疫染色では腫瘍細胞の細胞膜に CD99 が強陽性を呈し, FISH 法で EWSR1 遺伝子の再構成が確認され, 腫瘍は PNET と診断された. その後急速に腹腔内進展かつ全身転移をきたし, 腹水細胞診にて腫瘍捺印細胞診と同様の異型細胞が認められた. 初回手術後 7 ヵ月現在, 他施設にて化学療法中である.
結論 : 子宮筋層内の異様な変性筋腫様あるいは肉腫様の病変においては, PNET を鑑別疾患に加え検討することが肝要である. 子宮 PNET は非常にまれな腫瘍で, まだ不明な点も多くさらなる症例の集積が望まれる.