日本臨床細胞学会雑誌
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原著
甲状腺囊胞の細胞診判定区分
—適正か不適正か—
鈴木 奈緒子坂本 穆彦小松 京子藤山 淳三古田 則行戸田 和寿元井 紀子杉山 裕子
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2015 年 54 巻 2 号 p. 103-106

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抄録

目的 : 「甲状腺癌取扱い規約」では「適正」と判断される囊胞が, ベセスダシステムでは「不適正」とされる. 本研究では甲状腺細胞診の自験例から囊胞成分を認める例を抽出し, 検討した. 囊胞を「適正」とすべきか「不適正」とすべきかの議論の一助としたい.
方法 : 2010~2012 年に, 当院にて施行された甲状腺穿刺吸引細胞診および他院借用標本再鏡検例を対象とした.
成績 : 対象 1457 例中 231 例 (15.9%) に囊胞所見がみられた. このうち 53 例 (23.0%) はベセスダシステムでは「不適正」と判定された. 「取扱い規約」において囊胞所見を伴った正常または良性とされた例の 12.0%は手術され, 良性が 64.7%, 悪性が 35.3%であった.
結論 : 判定基準を「取扱い規約」からベセスダシステムに移行することで生じる違いは, 以下の 3 点と考えられた. ①囊胞性病変の分だけ「不適正」症例の占める率が上がる. ②囊胞成分のみで「不適正」と判定された例も画像所見を加味して判断するので, 臨床的意義のない再検が増えるおそれはない. ③囊胞成分のみの例を「良性」としないことで, 囊胞性乳頭癌が偽陰性に判定される危険性は減る.

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© 2015 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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