日本臨床細胞学会雑誌
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症例
核内および細胞質内封入体を認めた悪性中皮腫の 1 例
町田 浩美圓谷 勝永井 多美子佐々木 英夫加藤 輝中里 宜正小島 勝正和 信英
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2015 年 54 巻 4 号 p. 250-257

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抄録

背景 : アスベスト曝露歴がなく, 原因不明の胸水貯留で経過観察中に胸水細胞診で核内封入体や好酸性の細胞質内封入体を認めた悪性胸膜中皮腫の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 38 歳, 女性. 検診で左胸水貯留を指摘され入院. CT にて軽度胸膜肥厚がみられるのみで, 胸水細胞診, 胸膜生検するも確定診断にはいたらなかった. 外来で胸水細胞診検査にて経過観察中, 悪性中皮腫の可能性が疑われ, 胸水細胞診での免疫学的検索および, 左壁側胸膜摘出術標本により悪性胸膜中皮腫と診断が確定した. 胸水細胞診標本には核内封入体や好酸性の細胞質内封入体が認められた. 胸水細胞検体を用いた電子顕微鏡 (電顕) 的検索の結果, 核内封入体は 1 層の膜に囲まれた膠質状の構造物として認められ, 好酸性の細胞質内封入体は拡張した粗面小胞体および管状を示す構造物が大小の渦巻状構造物として認められた.
結論 : 悪性中皮腫における核内封入体の報告例は少ないが, 反応性中皮細胞との鑑別に有用であるとの報告がある. 悪性中皮腫の診断における核内封入体および, 本症例で認められたような細胞質内封入体の形態学的性状や出現率などを細胞学的, 電顕的に詳細な検索を行い, その出現の診断的意義を検討していく必要があると思われた.

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© 2015 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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