日本臨床細胞学会雑誌
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症例
円錐切除後の細胞診を契機に診断確定された子宮頸部 “胃型” 粘液性腺癌の 1 例
小島 淳美佐藤 正和田母神 佐智子大亀 真一白山 裕子竹原 和宏野河 孝充寺本 典弘
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2015 年 54 巻 5 号 p. 328-334

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抄録

背景 : 子宮頸部胃型腺癌は内子宮口付近で内向性に発育する傾向があり, 早期病変は生検組織診による診断確定が難しく, 円錐切除術が施行されることも多い.
症例 : 40 歳代後半, 4 経妊 2 経産. 不正性器出血を主訴に前医を受診し, 子宮頸部細胞診で腺異形成を疑われたために紹介された. 経腟超音波断層法では頸管内に小囊胞の集簇が認められた. 当院外来における細胞診では異型腺細胞, 生検組織診では腺異形成と診断され, 円錐切除術では異型を伴わない分葉状頸管腺過形成と診断された. このため経過観察とされていたが, 円錐切除後 8 ヵ月の細胞診で腺癌を疑う細胞が認められた. 引き続き行われた生検では診断が確定されず, さらに 3 ヵ月後の再検査で上皮内癌と診断された. 子宮全摘術が施行され, 組織学的検索の結果約 2 cm の範囲で浸潤する胃型腺癌が確認された. 病変の主座は内子宮口に存在しており, 円錐切除後の瘢痕部付近では浸潤癌は認められなかった. 術後 6 年間再発を認めていない.
結論 : 早期の胃型腺癌は円錐切除では主病変が含まれず, 診断確定が困難なことがあるため, 結果が陰性であっても精査の継続あるいは慎重な経過観察が必要である.

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© 2015 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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