日本臨床細胞学会雑誌
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症例
術中胸水細胞診で診断に苦慮した胸腺原発非定型的カルチノイドの 1 例
今村 彰吾小田澤 由貴小田 顕子宮久 禎西山 尚子田口 健一西山 憲一
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2016 年 55 巻 2 号 p. 117-122

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抄録

背景 : 洗浄胸水中に腫瘍細胞が出現し, 小細胞癌との鑑別に苦慮した胸腺原発非定型的カルチノイドの 1 例を経験したので報告する.
症例 : 60 歳代, 男性. 検診胸部 X 線で異常陰影を指摘され, 他院 CT 検査で縦隔腫瘍疑いとなり当院紹介受診となった. 開胸時胸水はなく肉眼的に明らかな播種はなかったが, 胸腔内播種確認のため洗浄胸水細胞診が提出された. 裸核様の細胞が重積性で結合の強い大小の立体集塊や, 平面的で結合の弱い集塊が認められた. 個々の細胞は小型で大小不同があり核形不整, 核クロマチンは粗顆粒状であった. 細胞診断は小細胞癌と他の神経内分泌腫瘍との鑑別に苦慮した. 病理組織学的には小型の異型細胞の増殖がみられた. 壊死像や, 10 高倍率視野で 3~5 個の核分裂像も認めた. 免疫組織化学的に上皮系, 神経系のマーカーが陽性となり最終病理診断は非定型的カルチノイドとされた.
結論 : 洗浄胸水にみられる腫瘍細胞が小細胞癌との鑑別に苦慮する際には, 集塊の出現様式や核クロマチンパターンを詳細に観察することが重要である.

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© 2016 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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