日本臨床細胞学会雑誌
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症例
Diethylstilbestrol 暴露歴のない腟原発明細胞腺癌の 1 例
玉手 雅人長尾 沙智子松浦 基樹郷久 晴朗杉田 真太朗田中 綾一岩﨑 雅宏齋藤 豪
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2016 年 55 巻 5 号 p. 350-354

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抄録

背景 : 腟原発の悪性腫瘍はまれであり, 発生部位によっては視認が困難となるため, 発見が遅れることもある. また, 組織型は大半が扁平上皮癌であり, 腺癌は稀少である. 腺癌の場合は, Diethylstilbestrol (以下, DES) の暴露や中腎管の遺残, 泌尿生殖臓器の奇形が Adenosis を引き起こし腟明細胞腺癌の病因となった可能性が指摘されている. そのため, 化学物質の暴露歴や遺伝的素因を聴取し, 細胞診と組織診によって診断をつけて治療を行う必要がある.

今回, われわれは DES 暴露歴や泌尿/生殖器系奇形のない腟原発明細胞腺癌の 1 例を経験したので報告する.

症例 : 閉経後の 1 経妊の女性. DES 暴露歴はなく, 腟壁の内膜症や生殖器の形態異常は認めなかった. 手術前の生検と画像診断の結果から腟原発明細胞腺癌, 臨床進行期Ⅰ期であると診断し, 根治手術を受けることを勧めたが, 患者の宗教的思念や希望に応じて病巣を局所的に全層切除することを選択された. 術後診断は, 腟癌 FIGOⅠ期 pT1pNXpM0 であり切除断端に癌は認められなかった. しかし癌の根治性を高めるために術後補助化学療法として Pacritaxel/Carboplatin 療法 (以下, TC 療法) を 6 コース施行された. 最終治療から 3 年以上無病生存中である.

結論 : 腟原発明細胞腺癌は非常にまれであり, 予後不良である場合も多い. われわれは早期発見に努めるため, 腟壁の観察や有症状部位からの細胞診や組織生検による診断を行うべきである.

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