2017 年 56 巻 2 号 p. 101-106
背景 : 甲状腺や皮膚の MALT リンパ腫では他臓器と比較し形質細胞への分化が高率に認められる. 今回, 著しく形質細胞への分化を示した甲状腺 MALT リンパ腫の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 80 歳代, 男性. 右前頸部に腫瘤性病変を指摘され, 甲状腺および右頸部リンパ節の穿刺吸引細胞診が施行された. 核偏在傾向を示し, 好酸性の細胞質を有する境界明瞭な細胞, 細胞質顆粒状で境界不明瞭な細胞が出現していた. 車軸状に凝集した粗大クロマチンを有する細胞, 胞巣状構造やロゼット様配列を認めた. 形質細胞様の異型細胞が増殖する腫瘍性病変が疑われた. その後, 甲状腺生検が施行された. 形質細胞様の細胞がびまん性, 密に増殖し, 免疫染色では CD10−, CD20+/−, CD79a+, CD138−, CD56−, κ+, λ−, IgG4−, CEA−, カルシトニン−であった. 細胞の形態・増殖様式および免疫組織化学的検索の結果より MALT リンパ腫と診断された.
結論 : MALT リンパ腫の診断確定には組織学的検索および免疫組織学的検索が必要であり, さらに臨床所見, その他の検査結果等を含めた総合的な判断が必要なことがあるため, 甲状腺穿刺吸引細胞診にて, 著しく形質細胞への分化を示す甲状腺 MALT リンパ腫を推定病変に挙げることは重要と考える.