日本臨床細胞学会雑誌
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症例
膀胱洗浄液細胞診で推定しえた G-CSF 産生膀胱癌の 1 例
小堺 智文立石 文子神宮 邦彦飯塚 啓二岩本 拓朗石田 章子太田 浩良
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2017 年 56 巻 4 号 p. 172-177

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抄録

背景 : Granulocyte-colony stimulating factor (G-CSF) 産生腫瘍はさまざまな臓器に発生し, 予後不良である. 今回, G-CSF 産生膀胱癌の 1 例を報告する.

症例 : 82 歳, 女性. 血尿を主訴とし当院を受診. 血算では白血球数が 38700/μlと増加し, 膀胱鏡では結節状腫瘍を認めた. 膀胱洗浄液細胞診では, 多数の好中球を背景に, 大型核と豊富な胞体を示す大型で円形~類円形の異型細胞が観察された. また, 胞体内に好中球の emperipolesis を示す巨大な異型細胞を認め, G-CSF 産生腫瘍を推定した. 経尿道的膀胱腫瘍切除検体の組織診では, 著明な好中球浸潤を認め, 高異型度尿路上皮癌の成分に加え, 大型で円形~類円形の異型細胞の増生からなった巨細胞亜型尿路上皮癌の成分を認めた. 両組織型とも免疫組織化学的に G-CSF 陽性を示し, G-CSF 陽性の巨細胞亜型を伴う高異型度尿路上皮癌と診断した. 膀胱全摘除術後, 白血球数は基準値内に低下した.

結論 : G-CSF 産生腫瘍の細胞診断では, 背景の著明な好中球浸潤と腫瘍細胞胞体内の好中球の emperipolesis に注目することが重要である.

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© 2017 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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