日本臨床細胞学会雑誌
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原著
口腔扁平上皮癌擦過細胞診における細胞量, 細胞所見および正診性に関する従来法と液状化検体細胞診 (SurePath 法) の比較検討
久山 佳代二谷 悦子浮ケ谷 匡恭松本 敬森川 美雪末光 正昌齋藤 隆明宇都宮 忠彦酒巻 裕之大村 光浩
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2017 年 56 巻 5 号 p. 210-217

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抄録

目的 : 病理組織学的に扁平上皮癌 (squamous cell carcinoma : SCC) と診断された口腔擦過細胞診の従来法と Liquid based cytology (LBC, SurePath 法) における細胞量, 細胞所見および SCC 的中率の比較検討を目的とする.

方法 : スプリット・サンプル法で作製した口腔擦過細胞診標本 (従来法および SurePath 法各 23 例) を対象に細胞量, 画像解析ソフト ImageJ 1.48 による角化型表層系異型細胞の数値化 (細胞質光輝性・円形度・クロマチン不均等分布) および細胞検査士による細胞所見 (背景・細胞集塊・細胞質・核) と SCC 的中率の比較検討を行った.

成績 : 細胞量は SurePath 法が有意に多かった. 角化型表層系異型細胞の光輝性は従来法が, クロマチン不均等分布は SurePath 法が大きく, 円形度は同等であった. 細胞所見は, SurePath 法が細胞種ごとにグルーピング化されるために背景の細胞の重なりが失われ, 観察しやすかった. しかし, 従来法で認められる表層系異型細胞特有の細胞質辺縁形態が喪失し, 深層系異型細胞の核の透明性が亢進した. SCC 的中率は, 従来法 62.0%, SurePath 法 61.9%で両者に有意差は認められなかった.

結論 : SurePath 法は従来法と比較して細胞量に優位性が認められた. 従来法および SurePath 法のそれぞれに特有の細胞所見が存在したが, SCC 的中率は両者に有意差がみられなかった.

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