日本臨床細胞学会雑誌
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症例
腎盂に発生した microcystic urothelial carcinoma の 1 例
西周 裕晃関田 信之下境 博文齋藤 博子北風 あゆみ菅野 勇
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2017 年 56 巻 5 号 p. 250-254

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抄録

背景 : Microcystic urothelial carcinoma は, 2004 年に WHO 分類に加えられた腫瘍である. 今回, 腎盂に発生した本疾患 1 例を経験したので報告する.

症例 : 70 歳代, 男性. 2 ヵ月前から肉眼的血尿を自覚し, 尿閉のため救急搬送された. 腹部 CT で左腎盂に腫瘍病変を認め, 自然尿細胞診では, 腫瘍細胞は小型であるも核形不整や核の濃染を呈していた. 臨床的に左腎盂癌と診断され, 左腎尿管全摘術が行われた. 病理組織学的所見として, 腫瘍細胞は小腺腔を伴う中小の巣状に増殖する尿路上皮癌で, 腎実質へびまん性に浸潤していた. 術後約 8 ヵ月で胸水貯留および胸膜転移をきたし, その後 4 ヵ月で永眠された.

結論 : Microcystic urothelial carcinoma は, きわめてまれで悪性度の高い腫瘍である. 出現細胞は小型で, 特徴的な所見を有さないため, 術前の尿細胞診で本疾患を推定することは困難である. 本疾患を, 悪性度が高く予後不良な腫瘍として認識しておくことは重要と考える.

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