2019 年 58 巻 4 号 p. 149-154
目的 : 気管支肺胞洗浄液 (以下 BAL 液) の細胞診においては, 喀痰に比較して反応性 II 型肺胞上皮の細胞所見が明瞭に観察されるため, 細胞像の検討を行った.
方法 : 2011 年 4 月から 2016 年 7 月に当施設に依頼された BAL 液検体のうち反応性 II 型肺胞上皮が出現した 12 例の細胞像を観察した.
成績 : 症例間の細胞異型の程度や出現数の差はあるが, 反応性 II 型肺胞上皮細胞に共通する細胞像が観察された. 十数個までの小乳頭状の細胞集団が出現し, 腫大する核, 著明な核小体がみられた. 孤立性細胞もみられ, ときとして大型のものがみられることもあった. 細胞質は泡沫状のもの・大小の多数の空胞を有するもの・厚みのある均質な細胞質を有するものと 3 種類の所見が各症例にみられた. Collagen globule・Mallory body も時に出現していた.
結論 : BAL 液細胞診における反応性 II 型肺胞上皮細胞の共通する細胞像を把握し, 出現する背景病変を理解することにより, 各種呼吸器細胞診において異型腺系細胞がみられた場合は安易に腺癌とせず, 少しでも疑った場合には, 必ず臨床情報について時間的な推移を含めて問い合わせることが重要である.