日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
症例
胆汁細胞診で検出したランブル鞭毛虫の 1 例
片山 ひかり中村 博小関 ほの香坪内 優子奥山 直子飯田 俊佐伯 春美橋爪 茜泉 浩冨田 茂樹
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 61 巻 3 号 p. 165-171

詳細
抄録

背景:ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症)は,消化管・胆道系に寄生する原虫であるランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)による感染症である.今回われわれは,内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)で採取された胆汁細胞診において検出したランブル鞭毛虫について報告する.

症例:患者は 90 歳代,女性.胸のつかえ感・疼痛・食欲不振で当院を受診.腹部 CT 検査において胆管部に異常陰影を指摘され,ERCP 目的で入院となった.十二指腸潰瘍と下血もみられ経過観察が続いたが,潰瘍治癒後に ERCP を施行,胆汁・粘膜組織が採取された.胆汁細胞診では Giemsa 染色,風乾後メタノール固定 PAS 染色において左右対称位置に複数の鞭毛と 2 核を有する特徴的なランブル鞭毛虫の栄養型を明瞭に観察することができた.組織生検では,虫体の側面と思われる形態が多く,検出は非常に困難であった.

結論:本例は一般的に湿固定のため細胞が剥離しやすいとされる Papanicolaou 染色では虫体がみられず,虫体の保持,観察には Giemsa 染色ならびに風乾後メタノール固定 PAS 染色が有用であり,容易に検出につなげることができた症例であった.

著者関連情報
© 2022 公益社団法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top