1980 年 19 巻 3 号 p. 474-478
尿閉を初発症状として発見された61歳の婦人にみられた膣壁原発の極めてまれなるmesonephric adenocarcinomaの1症例を経験したので, 組織像および細胞像を中心に報告する.
本症例をmesonephric adenocarcinomaと診断した根拠は, 腫瘍の細胞像および組織像がmesonephric adenocarcinomaの細胞像および組織像のcriteriaを満足するものであると同時に, 本腫瘍の発生部位がwolffian originの腫瘍の好発部位であり, かつ腫瘍組織の辺縁の一部に非腫瘍性のwolffian remnantsが認められたためである. さらに全身的な各種の検索によっても, 原発巣が腟壁以外に認められなかったためである.