一般に気管支腺由来の腺癌は気管支粘膜に覆われているために, 喀痰細胞診は陽性になりにくいとされている.
症例は69歳の元鉱夫で, 嚥下困難を初発症状として来院し, 喀痰細胞診で腺癌が疑われ, 精査の結果気管支腺由来の肺腺癌であったので喀痰細胞像, 捺印細胞像および組織像を中心に報告する.
本症例を気管支腺由来とした根拠は, 組織像で, 気管支粘膜下にAdenoid cystic carcinoma, 印環細胞の増殖を伴い, Tubular adenocarcinomaの像への移行を示していた, かつ近傍には気管支腺に類似した腫瘍細胞の増殖が認められた事また本腫瘍が左上幹より発生したためである. さらに剖検時の全身的検索によっても他に原発巣らしきところは見当たらなかった.