日本臨床細胞学会雑誌
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喀痰中に腫瘍細胞の出現した睾丸胎児性癌の1剖検例
免疫組織化学的検討
根本 則道根本 充弘登坂 朗小沢 尚男子川生 明桜井 勇田中 昇
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1981 年 20 巻 3 号 p. 552-558

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抄録

原発巣確定以前に喀痰中に腫瘍細胞の出現した睾丸原発胎児性癌の1例を経験し, 剖検時採取された原発巣, 転移巣の捺印細胞像ならびに組織の免疫組織化学的検索所見を喀痰細胞像と比較検討した.
喀痰中に出現した腫瘍細胞は20~40μの多形性を有する細胞であり核細胞質比は大, 核クロマチンは顆粒状散在性であり明瞭な核小体が1~2個観察された. これら腫瘍細胞は孤立散在性ないし10数個の細胞よりなる集簇巣として観察され, 剖検時採取された原発巣, 転移巣の組織およびその捺印標本との比較では組織学的特徴をよく反映していると考えられた. 免疫組織化学ではAFPは原発巣, 転移巣の定型的胎児性癌部分およびより未分化な細胞よりなる部分にも証明されたのに対して, HCGとそのサブユニットは原発巣においては短紡錘形ないし多形細胞に, また肝転移巣内に稀に存在するsyncytiotrophoblast様の巨細胞にのみその局在が証明された. CEAは原発巣, 転移巣ともに陰性であった.
以上より喀痰細胞像は胎児性癌の組織学的特徴をよく反映し不規則な腺管様ないし乳頭状パターンに特徴づけられると考えられた. しかし, 胚細胞性腫瘍の診断には詳細な細胞学的検索はもちろん, 患者の性, 年齢, および血清中のtumor markerの検索が必須であると考えられる. さらに今後細胞診領域における免疫組織化学の応用は胚細胞性腫瘍の診断に有用な手段になると考えられる.

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