日本臨床細胞学会雑誌
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悪性経過を示した血管周皮腫の1例
松田 実成瀬 靖悦曾根 啓子
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1983 年 22 巻 1 号 p. 69-74

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抄録

64歳男性の右足関節外側部に発生した血管周皮腫に対して, 穿刺細胞診を施行したのでその細胞所見を報告する.
腫瘍細胞は, 不規則重積性を示す大きな集団あるいは平面的な配列を示す小集団を形成し, 集団のまわりには多数の孤立散在性の腫瘍細胞が認められた. 大きな集団のあるものでは, ときどき集団の中に円形の空間がみられ, 空間をとりかこんで多数の腫瘍細胞が重積していたが, 空間に面した辺縁には細長く扁平な血管内皮細胞と思われる細胞がみられた. 集団を構成する細胞は, 細胞質は淡くその辺縁は不明瞭で, 円ないし類円形の核を有し, 核縁は薄く円滑, クロマチンは細顆粒状で核内に均等に分布し, 小さい核小体が1-2個認められた. 小集団を形成する細胞は, 細胞質が比較的豊富でその境界は明瞭であり, 紡錘形核を有するものがみられた.
われわれは初め悪性と診断し得なかったが, 細胞採取量の豊富なこと, 細胞の形の多様性, 円形核と紡錘形核の混在, クロマチンの増量, 小さいが著明な核小体の出現などから悪性非上皮性腫瘍細胞を考慮すべきであったと考えられた. しかし正確な診断のためには外科的生検が必要であろう.

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