日本臨床細胞学会雑誌
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多彩な細胞像を示した膀胱癌の1例
斉藤 多紀子佐川 文明
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1983 年 22 巻 4 号 p. 845-854

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抄録

66歳, 男性の膀胱癌患者の尿中に扁平上皮化生および腺化生を伴う移行上皮癌が観察された症例を経験したので報告する.生検で乳頭状移行上皮癌と診断され, 加療中経時的に尿細胞診で, 三者の腫瘍細胞が観察された.
手術時の病理組織診断では, G-3を示す移行上皮癌で, この癌巣に接して扁平上皮化生部と乳頭状腺構造が認められた.手術時の組織と同一部位のスタンプ標本を作成して三種類の細胞を同定, その所見から尿中の腫瘍細胞を分類した.移行上皮癌は紡錘型, 細胞質は中程度の厚さで, 緑色に染まるものが多い.クロマチンは粗顆粒状が多い.核小体は小型で1~3個までみられる.扁平上皮化生の細胞形は扁平上皮癌細胞と同じ形態を示し, 多彩で有尾型や線維型もみられ, 細胞質は厚く, 二層性で, 色は橙色, 緑橙混合もみられる.腺化生細胞も膀胱原発腺癌細胞と同様の形態を示し, 細胞質も薄く, 緑色で細胞境界は不鮮明, クロマチン量は少量, 微細顆粒状が多い.核縁は円滑, 核小体は小型で多数観察されるのが特徴である.細胞配列は重積性を示す.電子顕微鏡的にも, 三種類の細胞を裏付ける所見が観察された.

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