日本臨床細胞学会雑誌
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喀痰および肺洗浄液による肺胞蛋白症の診断
1症例の報告
横山 繁生林田 蓉子山下 裕人森内 昭手島 英雄望月 祐一辻 浩一田代 隆良
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1984 年 23 巻 1 号 p. 50-56

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抄録

肺胞蛋白症の1例で, 生検, 喀痰検査と同時に肺洗浄液の細胞学的, 組織化学的検索, 生化学的分析および電顕的観察を行う機会を得たので報告する.症例は53歳の男性で塵肺症認定患者である.レ線上, 両肺野にびまん性顆粒状ないしは小結節状陰影がみられ, 抗生剤, 抗結核剤の投与にもかかわらず改善せず肺胞蛋白症の疑いで生検, 喀痰検査が行われた.喀痰中には好酸球とシャルコー・ライデン結晶が多数出現し, 軽度から高度の異型を示す扁平上皮化生細胞も少数認められた.背景にはPAS陽性で, ライトグリーンに染まる細顆粒状物質が散見された.生検では肺胞内は好酸性細顆粒状物質で満たされ, このなかに組織球または剥離肺胞上皮と思われる細胞が少数みられた.気管支には扁平上皮化生, 好酸球浸潤, 珪肺結節などを認めた.肺洗浄液沈渣の電顕的観察では, 多数のミエリン様構造物とオスミウム好性球状構造物が存在し, 球状構造物の一部にミエリン様構造物を形成していた.またII型肺胞上皮由来の1amellarbodyがミエリン様構造物で取り囲まれる像も観察された.肺洗浄液の生化学的分析では, 飽和レシチンに富むリン脂質が大半を占め肺surfactant類似物質であった.

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