日本臨床細胞学会雑誌
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外陰部乳頭状汗腺腫の細胞像
望月 博守矢 和人久保田 浩一河西 十九三
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1984 年 23 巻 2 号 p. 138-142

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抄録

症例は41歳の女性で, 腫瘍は左小陰唇外側にあり, 周辺組織が堤防状に隆起し, 浅いクレーター内に乳頭状面を形成していた.
腫瘍表面からの擦過細胞診で, 最も多くみられたのはシート状配列をした, ライトグリーン淡染性の胞体をもつ多稜形の細胞でN/c比は中等度, 核は円形または楕円形で, 細顆粒状のクロマチンを有するものである.また, 重積性を示す, 比較的大型の幅広い円柱状細胞で核は偏在し, 細胞質は泡沫状で核クロマチンはやや粗大顆粒状を呈し, 著明な核小体を有する細胞もみられた.
コルポスコピーでは表面が子宮頸部円柱上皮領域にみられるvilliに類似した乳頭状構造を示し, 酢酸加工によっても異常コルポ所見は認められなかった.
組織学的には1~2層の円柱上皮より構成された乳頭状~管状の腺腫様増殖を示し, 腺腔側では断頭分泌が, 基底側では筋上皮細胞がみられた.
以上, 細胞診所見, コルポ診所見より, 良性病変と診断され, 組織学的所見より, 外陰部乳頭状汗腺腫と診断された.
この疾患は組織学的に腺癌との鑑別が困難なことがあり, 組織診断に際しては, 細胞診所見, コルポ診所見をふまえて診断することが重要であると考えられた.

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