日本臨床細胞学会雑誌
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直腸カルチノイドの1例
南 修二中西 功夫
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1984 年 23 巻 3 号 p. 430-433

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抄録

60歳男性の直腸カルチノイドを経験したので, その捺印細胞所見を中心に報告した.捺印細胞診では, 腫瘍細胞は重積性または敷石状の細胞集団をとり, まれにロゼット様配列を示した.個々の腫瘍細胞は, 淡緑色泡沫状の細胞質と粗顆粒状クロマチンの均一円形な核をもつ特長を備えていた.さらに, 散在性に濃染核をもつ小型異型細胞も混在していた.核小体は明瞭でなかった.腫瘍は大きさ1.6×1.3cm, 広基性の隆起を示す粘膜下腫瘍であった.組織学的には固有筋層内にまで浸潤する混合型のカルチノイドであり, 労直腸リンパ節1個に転移が認められた.電顕的検索で, 腫瘍細胞の原形質内に直径100~300nm大の限界膜で囲まれた電子密度の高い分泌顆粒が確認された.なお, 本症例は尿中5HIAA, 血中serotonin値は正常でありカルチノイド症候群を呈さなかった.

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