1984 年 23 巻 4 号 p. 598-603
組織学的に検索された原発性肺癌343例について, 喀痰細胞診の陽性率に関与する種々の因子を検討した. 特にこのうち88例の手術例に関しては, 病理学的因子を詳細に検索し陽性率との関係を検討した.
1) 肺癌の組織型別頻度では, 扁平上皮癌が44.0%と高率を示した.
2) 組織型別喀疲細胞診陽性率では, 扁平上皮癌72.2%, 腺癌・小細胞癌67.3%であった.
3) 連続検査の重要性, 生検後の陽性率の向上を確認した.
4) 手術例にて, 腫瘍が浸潤ないし占拠する気管支次数が喀疾細胞診の陽性率に最も関連する因子と考えられた. 扁平上皮癌が最も著明にこの傾向を示した.
5) 上葉と下葉を比較すると, 左右の肺はともに同じ気管支次数にて, 下葉がより高い陽性率を示した.
6) 陽性率は腫瘍径の増大に伴って上昇した. 特に腺癌においてこの相関が著明であった.
7) 扁平上皮癌ではリンパ節転移, 腺癌では胸膜浸潤陽性例が, 陰性例に比し著明な陽性率の差を示した.