日本臨床細胞学会雑誌
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原発不明癌に合併したカリニ肺炎の1例
斉藤 誠阿部 真也小野 寿太郎小中 千守林 永信加藤 治文早田 義博島 英明蜂谷 哲也佐々 弘
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1985 年 24 巻 1 号 p. 65-70

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抄録

Pneumocystis carinii肺炎が白血病等の血液疾患の化学療法中に合併することはよく知られているが, 最近では固形癌との合併が注目されている.
本症例は臨床的に肺癌および縦隔リンパ節転移と診断された48歳の男性で, 化学療法施行中に肺浸潤を認め, 経皮吸引針生検細胞診を施行した.穿刺材料はただちにグロコット法で染色され, 類円形の壁の濃染した嚢子を認めた.剖検肺の組織像は, 浮腫, 巣状出血および硝子膜の形成を示し, それらの病変に混在して肺胞腔が泡沫状物質で充填されている像を認め, グロコット染色で肺胞腔内に典型的カリニの嚢子が確認された.全身のリンパ節, 骨髄および脾に腺癌の転移を認めたが, 固有肺葉内, 消化管に腫瘍性変化は認められなかったところから原発不明癌とされた.
原発部位が不明の腺癌症例の化学療法中に生じた肺浸潤に対して経皮吸引針生検細胞診を施行し, カリニ肺炎と診断した症例を経験したので報告する.

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