日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
肺小細胞癌および網膜芽細胞腫培養株のLDHアイソエンザイムパターンの検討
円谷 勝中島 孝寺崎 武夫児玉 哲郎下里 幸雄樋口 久晃上井 良夫
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 24 巻 3 号 p. 451-456

詳細
抄録

肺小細胞癌, 肺腺癌および網膜芽細胞腫培養株を用いて, そのLDHアイソエンザイムパターンを酵素細胞化学ならびに電気泳動法により検討した.酵素細胞化学的染色による尿素阻害試験では, 肺小細胞癌培養株7株, 網膜芽細胞腫培養株2株の全例が2.6M尿素に対し抵抗性を示したのに対し, 肺腺癌培養株2株はいずれも2.6M尿素でほとんどLDH活性が失われた.電気泳動法による分析では, 肺小細胞癌, および網膜芽細胞腫培養株はいずれも, LDH分画のIIかIIIにピークを有し, 非常に似たLDHアイソエンザイムパターンを示した.両培養株のM/H比はそれぞれ, 平均, 0.86±0.16と0.92±0.15で, ややH型優位のパターンであった.しかし, 肺腺癌培養株の2株ではLDH分画のIVまたはVが多いパターンを示し, M/H比は1.93, 2.11とM型優位のパターンを示し, 肺小細胞癌や網膜芽細胞腫培養株とは異なっていた.肺小細胞癌培養株のLDHアイソエンザイムパターンは肺腺癌培養株のものとは異なり, むしろ, 神経系腫瘍である網膜芽細胞腫培養株に類似していた.このことは, 神経内分泌系の性格を有するとされる肺小細胞癌の生物学的特性を示すものと考えられる.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top