1985 年 24 巻 4 号 p. 593-602
閉径後婦人の腟スミアに出現する細胞は, 乾燥, 萎縮, 変性など, いわゆる老人性変化が著しく, また悪性細胞に類似した異型細胞や, ホルモンの影響をうけた良性異型細胞など, 細胞判定が非常に困難でfalse positiveやfalse negativeの一因となることがある. それら閉経後スミアのうち組織診およびestrogen proliferative test (EPT) により確定診断の得られた43例について, 傍基底型癌細胞clustered malignantcellを中心にして, 細胞形態的検討を行った. 43例の内訳は, A群false positive 9例, B群false negative 7例, 対象として陰性16例, 陽性11例である.7項目の観察結果,
1) 悪性所見: 核の大小不同が強く, 狭い細胞質, 核のはみだし, 裸核, 特に核線を引いた裸核細胞が多く出現する.
2) 良性所見: 核の大小不同は少なく, 細胞径も小さい. 細胞質は豊富で, 平行性, 規則的配列, 裸核状で核線を引いた細胞は少ない.
3) 共通所見: 核小体は一部の癌細胞を除いて, 良, 悪性ともに認められることがある. 紡錘形核も共通だが良性異型にやや多い. 核径が10-13μぐらいの大きさのもの.
上記の結果に基づき, 再検討した結果, A群の9例のうち6例は陰性, B群7例中5例は陽性とすべき細胞であった. 100%の正診には至らなかったが, 閉経後スミアにおける悪性細胞の形態的解析の限界と考えられる.