日本臨床細胞学会雑誌
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卵巣類中腎腫の剥離細胞学的研究, 特にその粘液の由来について
大村 剛跡部 一朗武井 成夫片山 進渡辺 肇平川 舜秋間 道夫野口 昭二林田 和郎熊谷 清坂井 義太郎
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1985 年 24 巻 4 号 p. 610-619

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抄録

卵巣類中腎腫の粘液をムチン性腫瘍と対比して, 塗抹細胞標本, 組織標本を作製し, 細胞組織化学および超微形態学的に検討した. 類中腎腫の細胞ではAlcian Blue (AB)-Periodate Acid Schiff (PAS) 染色で細胞質縁AB陽性, 細胞質内部はPAS陽性にそれぞれ鮮明に染めわけられるのに対し, ムチン性腫瘍では細胞質内外ともに, 同一の染色態度がみられた. 卵巣類中腎腫の粘液染色陽性物質は, ムチン性腫瘍に存在する粘液と混同されていたが, 今回の成績より, 類中腎腫の管腔内AB陽性物質は, 細胞質内部で粘液顆粒として合成され細胞外に分泌される本来の粘液ではなく, 細胞遊離縁微絨毛の表面に存在する糖蛋白すなわちGlycocalyx (Bennet, 1963) であることが確認された. 卵巣上皮性腫瘍に観察される上皮性粘液は細胞質内部で粘液顆粒として合成され細胞外に分泌される真の粘液と, 細胞遊離縁に存在し酸性基をもつ糖蛋白に分類して, その局在を明確にすべきである.

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