日本臨床細胞学会雑誌
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甲状腺原発悪性リンパ腫の3例
穿刺吸引細胞診の意義
河西 信勝井上 哲生坂本 穆彦平田 守男都竹 正文原島 三郎
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1986 年 25 巻 1 号 p. 112-117

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抄録

近年, 甲状腺腫瘍の補助的診断法のなかでも, 穿刺吸引細胞診の有用性は高く評価されている.しかしながら, 頻度の高い乳頭癌以外の悪性腫瘍に対する診断基準は必ずしも明確であるとはいえず, 今後の問題となっている.著者らは穿刺吸引細胞診を行った甲状腺原発悪性リンパ腫3例の経験を通して, 本症における穿刺吸引細胞診の意義を検討し, 次の結果を得た.(1) 甲状腺腫瘍に対する穿刺吸引細胞診ではパパニコロウ, ギムザの両染色を行うことが大切である.(2) 悪性リンパ腫, 大細胞型の診断は比較的確実であるが, 小~ 中細胞型の診断は困難な場合がある.(3) 穿刺吸引細胞診で, 悪性リンパ腫, 小細胞癌の診断を受けたときは, いずれの場合もこの両者の可能性を考えて診断を進めるべきである.(4) 異常な経過を示す慢性甲状腺炎では, 悪性リンパ腫を疑い反覆して細胞診を行うべきである.また甲状腺原発悪性リンパ腫では, 67Gaシンチグラム, リンパ管造影, 肝シンチグラム, 胸部X線, 胃腸造影, 骨髄穿刺を実施して, 病巣の範囲を明確にすることが大切である.

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