日本臨床細胞学会雑誌
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超音波エコー下の吸引細胞診による肝限局性疾患の診断, 78例の成績と細胞像の検討
斉藤 美津子浅井 恵子鈴木 忠男済陽 高穂秋本 伸斉藤 明子久満 董樹多賀須 幸男
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1986 年 25 巻 3 号 p. 454-463

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抄録

各種画像診断法の進歩により, 肝に限局性病変が発見される機会が増し, その質的診断が求められるようになった.われわれは1980年7.月からの4年間に東京女子医科大学消化器病センターで行った超音波ガイド下の狙撃吸引細胞診の成績を集計し, 細胞像について検討を加えた.対象は肝細胞癌35例, 転移性肝癌14例, 転移性肝肉腫2例, 良性肝疾悪26例である.細胞の採取には21~23ゲージの針を用いた.重篤な合併症には遭遇しなかった.
悪性と正診できたものは, 肝細胞癌35例中23例 (66%), 肉腫を含む転移性肝腫瘍16例 (63%) であった.各種の良性肝疾患26例には, 誤陽性例はなかった.肝細胞癌について悪性細胞が得られた23例中18例 (78%) では細胞像から肝細胞癌と診断できた.その陽性率は, 病巣の大きさ, 細胞異型度, 血清AFP値と相関しなかった.誤陰性は, 壊死などにより癌細胞を採取できなかったことによると思われるものが多い.
肝細胞癌の細胞は, N/C比の増加, 核小体の肥大, 核クロマチンの増加などにより正常肝細胞と区別できるが, 癌の細胞異型度による細胞像の差は明らかでなかった.転移性肝癌との鑑別には, 癌細胞内の胆汁色素と好酸性穎粒が役立っ.

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