日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
各種抗腫瘍剤によるエールリッヒ腹水がん細胞の形態変化と細胞動態について
中村 忍五嶋 亜男吉田 喬大竹 茂樹伊藤 恵子小林 和美中西 二松田 保谷本 一夫
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 25 巻 3 号 p. 490-498

詳細
抄録

各種抗腫瘍剤によるがん細胞の形態学的変化を観察するために, エールリッヒ腹水がん担がんマウス腹腔内に, adriamycin, daunorubicin, cyclophosphamide, cytosine arabinosideおよびvincristineの中等量を投与し, 経時的に腹水を採取し, 光学および位相差顕微鏡下で観察するとともに, 総がん細胞数および分裂指数の算定, 核酸前駆物質の取り込み実験を行い, 細胞動態の変化についても検討し, 以下の結果を得た.
1. 薬剤投与後, 3-6時間で核小体の小型円形化がみられ, こののち, 核の大型化, 多核化, 核小体の大型不整形化が認められた.
2. 細胞質の変化は, 核の変化よりも遅れて始まり, まずミトコンドリアの膨化, 光輝性顆粒の増加がみられ, ついで, 細胞の腫大, 染色性の低下が認められた.
3. 以上の形態学的変化は, 作用機序の異なる抗腫瘍剤に共通して認められ, とくに, 核および核小体の変化は, 自然変性とは異なり, 抗腫瘍剤によるものと考えられた.
4. 細胞動態の変化よりみると, がん細胞の形態学的変化は, 抗腫瘍剤による死滅過程を示す所見であり, 抗腫瘍剤の効果を予知する指標の1つとなると考えられた.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top