日本臨床細胞学会雑誌
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甲状腺穿刺吸引細胞診における多パラメーター解析の診断学的意義
島 寛人三浦 清多羅尾 信高橋 正宜
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1986 年 25 巻 3 号 p. 499-510

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抄録

各甲状腺疾患について, 細胞診所見に加えて核内細胞質封入体, 細胞核長径, 顕微分光測光法による核DNA量および細胞総蛋白量の計測を行った.核長径は, 乳頭癌11例で, 7.8±1.4μ (mean±SD) から9.9±1.6μ, 濾胞癌で, 8.3±1.3μ および9.4±1.9μ, 未分化癌で, 10.7±2.9μ, 髄様癌で8.5±1.6μ, 9.0±1.8μ といずれも, 腺腫, 腺腫様甲状腺腫に比し増大したが, 慢性甲状腺炎でも, その多形性を反映し増大傾向が示された.核内細胞質封入体は, 良性疾患, 濾胞癌には認められず, 乳頭癌11例中10例, 髄様癌2例中1例, また, 未分化癌はその1例に陽性を示した.乳頭癌において, 癌細胞に占めるその出現頻度は, それぞれ0.4%から2.6%で, 出現頻度に関して他型のそれと有意差はなかった.核DNA量: 細胞総蛋白量は, 乳頭癌で, 計測全例の平均が2.51±0.90AU: 4.01±2.35AU, 濾胞癌で2.72±0.79AU: 2.78±0.99AU, 未分化癌で6.20±4.39AU: 6.70±4.81AUと, 腺腫例の平均2.28±0.65AU: 2.91±1.37AUに比較し, 濾胞癌で細胞総蛋白量の減少を認めた以外はいずれも有意 (P<0.001) に増加した.これらの客観的パラメーターの解析は, 甲状腺腫瘍の鑑別診断に有意義と考えられる.

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